サントリー美術館で、7月3日から9月1日にかけて「徳川美術館展 尾張徳川家の至宝」が開催された。本展では、尾張徳川家の史料・所蔵品を引き継ぐ徳川美術館の名品の数々が展示された。
構成は以下の通りである。
第1章 尚武 もののふの備え
第2章 清雅 ―茶・能・香―
第3章 求美
特別公開 国宝 初音の調度特別公開
特別公開 国宝 源氏物語絵巻
これらの展示室では様々な時期に尾張徳川家に伝来した重宝が陳列されていた。
第3章は武家の奥向(日常空間)で用いられた道具類の展示という点で特徴的であった。奥道具を1つの展示室に陳列するのは名古屋の徳川美術館で常設展として行われているものであり、多くの道具が散逸せずに残った尾張徳川家の美術館ならではの重要な展示であったといえよう。
一方で、第1章・第2章などは武装・数寄道具をそれぞれ並べる展示である。尾張徳川家になぜ多くの武具類・数寄道具が伝来したかといえば、近世の武家儀礼によるものである。近世の武家儀礼は刀剣の贈答、茶の湯・香道具などの飾り、儀礼中の観能などが組み合わさったものである。しかしながら、この展覧会ではそのような社会的背景を中心とした陳列はなされず、武具・茶道・能・香道などを柱とした陳列がなされた。武家儀礼に注目した展示を数多く手掛けてきた徳川美術館の名品展としては少しく不満の残るものであった。
徳川美術館といえば、佐藤豊三氏が長きにわたって在籍し武家儀礼についての研究を推し進めた博物館である。そのため、武家儀礼を題材にした特別展なども多く開かれているし、常設展では書院飾りの再現展示など研究成果を生かした展示を見ることができる。
もちろん、名品展として徳川美術館の所有する名品を満遍なく展示するためには、ある程度、仕方のないことかもしれない。しかし、学芸員の研究とそれを生かした展示という徳川美術館の大きな魅力を伝えきることはできていなかったのではなかろうか。








