本書は、豊臣秀吉の妻・浅野寧や浅井茶々をはじめとして豊臣家に関わる女性たちについて紹介した書籍である。
目次は以下のようになっている。節以降については煩雑になるので省略する。このほかに家系図や年表、読書案内(実際には参考文献リスト)があり、本書の理解の手助けをしている。
はじめに
第一章 豊臣秀吉の家族
第二章 一夫多妻の豊臣家
第三章 秀吉の婚姻政策―養女たちの行方―
第四章 豊臣家を支えた奥女中
第五章 大坂の陣をめぐる女たちの攻防
おわりに
目次を見てお気づきの通り、本書では秀吉の妻や養女といったいわゆる家族以外に、奥向に仕えた女性たちも紹介されている。第五章では茶々と秀頼のそれぞれの乳母、茶々付きの女中などが紹介されている。
多くの女性たちが取り上げられているため、一人一人の紙幅は多くはなく、さらっと読める。また、基本的に各個人の伝記なので、順番を気にせずに、興味がある人物から読むことができる。大河ドラマ「豊臣兄弟!」に登場する女性キャラクターの予習にも最適だろう。
本書で特徴的なことは、先に述べたように豊臣家の奥向に仕えた女性たちが紹介されていることだろう。
孝蔵主は奥女中の中でも著名であるが、詳しい来歴まで把握している人は少ないだろう。秀吉付きの老女であり、表向ではない内証ルートの取次をしていた。関ヶ原の合戦では大津城(滋賀県大津市)開城の交渉役も務めている。孝蔵主は慶長17年(1612)頃に江戸に下り、江戸城(東京都千代田区)の大奥で過ごし、江戸で死去している。彼女は秀吉からの信頼も厚く、内証ルートの取次をすることで強い影響力を持っていた女性である。
豊臣家の老女の中で孝蔵主に次いで重要な人物がちゃあである。北野社と関係が深く、『北野社家日記』などに頻繁に登場する。ちゃあも孝蔵主と同じように内証ルートの取次を担っていた。大名たちが表向のルートで秀吉に上申することが憚られるようなことについてはちゃあの内証ルートが頼りにされ、彼女の交渉能力の高さがうかがえる。
このように奥向の世界で女性たちは活動しており、その活動は表向の政治に影響を与えるものだった。表向での政治の結果が歴史として認識されやすいが、実際には奥向と表向は関係しあっている。秀吉が誰を妻にしたのか、養女を誰に嫁がせたかは豊臣政権の運営を考えるうえで重要な要素の一つである。そのため、妻や養女について言及されることは多いが、実際に奥向の実務を担う奥女中についてまとめた本書は貴重な存在である。
さて、余談ではあるが、秀吉を取り巻く女性たちとのエピソードでは、秀吉が前田豪(秀吉養女)に対して男であれば関白にしたい、しかし女であるので、女がつける天下一の官につけたい。寧より上の位につけたいと書状で伝えたものが筆者のお気に入りである。寧が聞いたら親バカすぎると笑ったに違いない。この書状については本書の前田豪の項目で取り上げられているのでぜひ読んで欲しい。
また、本書は新書であることもあってか、福田氏のさまざまな推測や思いなども豊富に書かれている。研究者も史料を前にしていろいろな想像するということがわかり、親しみやすさが感じられる一冊である。



