1位:【コラム】信康事件の新説について(hayato氏執筆)
2位以降の記事は2026年上半期に公開された記事だが、これはほかと違う。2025年に公開され、2025年上半期ランキングでも1位を獲得した記事である。そんな本記事が再びランキング1位になったのは、信康事件の新説を唱えた研究者が、関ヶ原の戦いの書籍を出したことで再び話題になったこと、および平山優氏による引用の効果が大きいだろう。
いずれにしても、信康事件は戦国大名の内紛の性格や、戦国時代の女性の役割を考えるうえで格好の題材となるにもかかわらず、一次史料が少なく実像が不明瞭な事件である。今後も精緻に研究を進める必要があるだろう。
2位:【戦国人物伝】今川家臣団#1 太原崇孚(鈴木将典氏執筆)
6月よりゆまにすとの執筆陣に加わってくださった鈴木将典氏は、東海地域をフィールドとして中近世移行期の大名権力(戦国大名・織豊大名)の特徴を研究している方である。具体的には、今川氏・武田氏・徳川氏などを研究対象としている。
そんな鈴木氏による今川家臣団の実像を解説するシリーズの第1弾が、一般的には今川義元の“軍師”として有名な太原崇孚である。崇孚が義元の重臣として外交や戦争に携わり、義元の代理も務めていたのは事実だが、中国にいるいわゆる“軍師”とは必ずしも職掌が一致しないとのことである。いずれにしても、義元の権力を考えるうえでとても重要な人物であることにかわりはないだろう。
3位:【新刊紹介】柴裕之著『羽柴秀長 秀吉の天下を支えた弟』(拙稿)
みなさんもご存じのように、2026年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』の主人公は羽柴秀長。本書は、時代考証をつとめる柴裕之氏による秀長の評伝である。
『豊臣兄弟!』にあわせて、豊臣政権・羽柴氏に関する書籍がたくさん刊行されており、ゆまにすとでも新刊紹介を行っている。書籍によってそれぞれ魅力があり、どれが特段すばらしいということはできないが、オーソドックスな秀長の評伝は何かというと、やはり本書を一番にあげることになるだろう。
むしろ、最初に本書を手に取って、これを基準に難しければより簡単な書籍を、もっと細かい話が知りたければ論文集を、ほかのテーマに興味がある人は関連書籍を、といったかたちで適宜手を広げていける。そういった点でまさに「入門書」にふさわしい書籍といえる。
4位:【展覧会評】戦国動乱の畿内―足利将軍家と細川京兆家の分裂―(にらく!氏執筆)
従来、戦国時代といえば戦国大名に注目が集まっていたが、近年は彼らの上位に君臨していた足利将軍・室町幕府にも注目が集まっている。戦国時代の将軍といえば、従来は織田信長に追放された“負け組”の1人として足利義昭が登場する程度であった。ドラマでも、単に愚弄な人物として描かれるか、頭脳は明晰であるものの当初から信長を敵視しており、信長包囲網の形成に暗躍するなどの描かれ方をすることが多かった。
しかし、近年の研究成果では、こうした見方が大きく訂正されている。まず、そもそも義昭と信長の関係に見直しが図られ、三方ヶ原の戦いまでは両者は協調関係であり、信長包囲網は正確には「義昭・信長包囲網」であると評価されるようになっている。また、信長上洛以前の将軍と戦国大名の関係も明らかになったことで、義昭と信長の関係は必ずしも特別なものではなく、「義晴・細川高国」「義輝・三好長慶」などと同様の関係であったことが明らかになったのである。
近年の将軍研究の成果は大河ドラマにも反映されており、直近では『麒麟がくる』の足利義輝・足利義昭兄弟と、三好長慶・松永久秀の描写が記憶に残っている人も多いだろう。また、『豊臣兄弟!』の足利義昭が武威を示していたことも記憶に新しい。
こうした研究成果は、博物館展示にも影響を与え、昨年、高槻市立しろあと歴史館で開催されたのが本記事で紹介している「戦国動乱の畿内―足利将軍家と細川京兆家の分裂―」である。
5位:【コラム】開かれた学問をめざして(拙稿)
本記事は、書籍や展示の紹介を通じて歴史学に触れる普段の記事とは一風変わっているため、公開当初は驚いた方もいらっしゃるかもしれない。しかし、みなさんはお忘れかもしれないが、本来の「ゆまにすと」は歴史学だけではなく広く人文学を題材として、楽しみながら一般向けにわかりやすく伝えていくことを目的としている団体である。
大まかな目的は「ゆまにすと」のコンセプトを参照してほしいが、あらためて筆者が考える学問の「有り姿」とは何か、そもそも学問に求められる目的とは何かをまとめたのが本稿である。本記事では文字数制限などから省略せざるをえなかった部分もあるためここで補強しておきたい。
筆者は現在、大学院生の立場であるが、筆者が常に考えていることは「私が大学院に進学しているのはけっして自分自身が有能だからというわけではない」ということである。
筆者が学部生のときに、同期で相談しながら卒業論文を作成しており、そのなかには私より明らかに意義のある卒論を執筆した同期がいたが、彼は大学院に進学しなかったということである。それでは、彼は学問に興味がなくて進学しなかったのかというとそうではない。学費の問題などさまざまな要素を総合的に考慮して、就職という道を選んだのである。
一方、私の知人には働きながら社会人学生として再び卒論を執筆し、その内容で学会報告をした方もいる。ほかにも、実際に報告や論文というかたちにはしていないものの、日常会話のなかで聞く考えなどは十分学術レベルに達していると思う方もいる。
今年の「回顧と展望」でも近世史側からの豊臣政権論が少ないことが指摘されているように、結局のところ研究の進展は研究の量、ひいては研究者の人数に大きく影響される。そうである以上、「研究者」「専門家」の範疇を狭めることは、学問全体を狭めることにつながるのではないか。
かつて私は「ヒストリカル・コミュニケーター」たろうとする本郷和人氏を批判したことがあるが(拙稿2024)、それはあくまでも手段に対する批判であり、目的そのものについてはまぎれもなく私自身も同じように考えているところである。
6位~10位
- 6位:【戦国人物伝】今川家臣団#2 朝比奈氏・三浦氏・福嶋氏(鈴木将典氏執筆)
- 7位:【学会評】戦国史研究会第541回例会(征夷大将軍氏執筆)
田邉隼斗氏「戦国大名今川氏家中における遠江朝比奈氏の台頭について」 - 8位:【新刊紹介】平山優編著『武田勝頼』(hibiki氏執筆)
- 9位:【新刊紹介】河内将芳編『秀吉と豊臣一族研究の最前線』(拙稿)
- 10位:【新刊紹介】黒田基樹著『羽柴秀吉とその一族 秀吉の出自から秀長の家族まで』(hayato氏執筆)
6位から10位までの記事は以上のとおりである。あいかわらず鈴木将典氏の記事は閲覧数が多いことがわかるほか、9位・10位には羽柴氏に関する書籍がランクインしている。これらは大河ドラマの影響が大きいと考えられる。
その他、特筆される記事
最後に、惜しくもランク外となってしまったが、あらためて注目される記事を2つ紹介しておきたい。
- 【コラム】国立博物館・美術館の中期目標について(上)(広瀬喜六氏執筆)
- 【コラム】国立博物館・美術館の中期目標について(下)(広瀬喜六氏執筆)
本記事は、2026年3月に公表された国立博物館・美術館の中期目標に関して、意見を表明したものである。つらつらと記されているが、この中期目標はようするに「博物館も儲けなさい」というものである。
しかし、博物館の第一義的な目的は公教育にあるのであって、本来的には公民館・図書館と同様の公共機関である。そうである以上、今回の中期目標、とくに財務省の示した諸資料は大きな問題を抱えているといえる。博物館行政の行く末に注視していきたいところである。






