主婦の友社/2025年11月刊/A5判/208ページ/1870円/ISBN:9784074622849

本書は“歴史系YouTuber”ミスター武士道氏による、豊臣秀長の解説本である。

内容としては、秀長の生涯を中心としつつ、兄・秀吉の動向や秀長・秀吉兄弟の主君・織田信長など、当時の戦国・安土桃山時代の情勢の移り変わりについて一通り触れているものとなっている。そのため、大河ドラマ『豊臣兄弟!』の入門書としてだけでなく、戦国時代後期の歴史の流れについて、初歩的な知識を頭に入れる目的でも使える書籍となっている。目次は以下のとおりである。

第一章 木下兄弟の誕生
第二章 織田家臣時代
第三章 本能寺の変~天下取り
第四章 転戦の日々―紀州、四国、九州
第五章 大和大納言秀長

本書の特徴は、秀長や歴史についてそれほど詳しくなくても、楽しく、わかりやすく、その生涯を追っていけるように、さまざまな工夫が凝らされている点にあるだろう。

著者の文体は平易で頭に入ってきやすいだけでなく、豊臣兄弟の父親の謎や秀長の家臣団の解説など、研究成果を取り入れた少々ディープな部分も押さえている。歴史研究の分野で用いられているような小難しい専門用語には適宜注釈が付けられており、全体を通してみると、その使用もかなり抑制されている印象を受けた。

また、各節の後ろにまとめとして付けられているマンガが本書の最大の特徴で、こちらの部分のみをパラパラとめくってイラストを眺めているだけでも、本書の内容はおおむねカバーできるような構成になっているのは考えられていると感じた。

さらに、日本史コンテンツに触れる際に、次々と出てくる地名や戦いの名前は、難解であり理解するうえで最大の障害となりうる。この点についても、読者を置いてけぼりにしないように適宜、地図を掲載して視覚情報で補完してくれている。これらの工夫もあってか、読み進める中で苦痛に感じるような箇所はほとんどなく、そのおかげで1時間もかからずに、サクサクと読了できてしまった。

 学校で習ったような知識しかない(しかもその多くが経年劣化により失われている)筆者にとって、秀長はあまり印象深い人物ではなく、豊臣秀次と混同して「最後、秀吉によって処刑されてしまった人」というイメージで覚えてしまっていたほどであった。

しかし、本書を通して秀吉を支え続けた彼の功績について知ることができ、 “地味な人”であった印象が大きく変わることとなった。秀長は、長宗我部元親が支配する四国への遠征時には秀吉に代わって総大将を務めたり、朝廷や豊臣氏のライバルである徳川家との交渉を担ったりしている。このように、豊臣一族の中で果たした秀長の役割を考えれば、秀吉による天下一統事業(近年の歴史学では、それまでの「天下統一」ではなく、当時使われていた「天下一統」を用いることが主流になっているらしい)への秀長の貢献には非常に大きなものがあったのではないかと感じる。 

すでに述べたとおり、本書は、豊臣秀長という人物に興味があるけど日本史には苦手意識がある人はもちろん、秀吉の天下一統を別の視点から眺めてみたいと考える人にも向いている一冊である。豊臣兄弟の家族回りなど、若干著者の主観による記述の比率が多いように感じられる部分もあるが、そこについてはむしろ読者の興味を引くことに繋がっているし、詳しく知りたいのであれば専門書へと進めばいいだけなのでそこまで気にならなかった(本書巻末に掲載されている参考文献はもちろん、 “ゆまにすと”にて紹介される本もその助けになるはずである)。

大河ドラマ鑑賞の際のお供として、あるいは見る余裕はないけど会話のタネにできたらと考えている貴方も、ぜひ本書を手にとってはいかがだろうか。 なお、著者のミスター武士道氏は、そのYouTubeチャンネル「戦国BANASHI【ミスター武士道】」でも、大河ドラマ『豊臣兄弟!』の各回感想や解説動画を投稿している。興味のある方はあわせて参照されたい。