令和8年(2026)は、戦国大名今川氏の基礎を築いた今川氏親(1473~1526)の没後500年にあたりました。氏親は戦国時代初期に駿府(静岡県静岡市)を本拠とし、駿河・遠江二か国を支配して、東日本を代表する戦国大名へと今川氏を発展させた人物です。室町幕府の守護から戦国大名への転換を実現した存在として、日本の戦国史において重要な位置を占めています。

静岡市歴史博物館では、この節目を記念して企画展「没後五〇〇年 戦国大名 今川氏親」を開催しました。会場では、静岡市内外に伝わる氏親ゆかりの古文書や、今川館跡・今川氏支配下の城館から出土した考古資料を展示し、氏親の生涯と領国経営、さらに戦国大名今川氏の成立過程について紹介しました。古文書と考古資料を組み合わせて展示することで、文字史料だけではわからない当時の社会や城館の実態にも触れていただけるよう工夫しました。

氏親は、東日本でもっとも早い分国法である『今川仮名目録』を制定し、領国内の裁判や家臣統制の基準を明文化したことで知られています。この法は後に武田氏の『甲州法度之次第』にも影響を与えたとされ、戦国大名による領国支配の先駆けとして高く評価されています。また、遠江への進出や城館の整備、家臣団の再編などを通じて安定した支配体制を築き、その基盤の上に義元の時代の今川氏の繁栄がありました。今回の展示では、こうした氏親の政治・軍事・法制度の各側面を、多様な史料から紹介することをめざしました。

展示資料のなかには、普段は公開される機会の少ない古文書や、近年の発掘調査で出土した資料も含まれています。これらを通じて、戦国時代初期の駿府や今川氏の実像を、最新の研究成果を踏まえて紹介することができました。また、近年は今川氏に対する関心が高まっており、従来の「桶狭間で滅んだ大名」というイメージではなく、戦国大名の先駆者として再評価する研究が進んでいます。企画展でも、そのような研究動向を分かりやすくお伝えすることを心がけました。

会期中は県内だけでなく全国各地から今川氏の歴史に関心を持つ方々が来館されました。また、漫画『新九郎、奔る!』の作者であるゆうきまさみ先生にもご来館いただくなど、SNSや各種メディアを通じた情報発信も、多くの方に企画展を知っていただくきっかけとなりました。没後500年という節目に氏親の業績をあらためて紹介できたことは、静岡の歴史や文化の魅力を広く発信する貴重な機会となりました。今後も、古文書や考古資料を通して地域の歴史をわかりやすく伝え、戦国時代の新たな歴史像を発信していきたいと考えています。